第23号 2004年 春



表紙の言葉

 紙人形のひなたちは、三島町・高清水集落の子どもたちが一軒一軒集めて、ひな祭りの翌日、木箱に積んで只見川に流す。
 女性たちの厄を移した紙雛は、川を流れて遠く淡島様まで代参してくれると信じられてきた。水の流れに厄を委ねる雅な風習は、金山町の小栗山、大志地区にも残っている。

紙雛に託す願い
  奥会津つれづれ  

 最近、近くの古本屋で見つけた本がある。昔アニメで見ていたムーミンの話だ。
 ムーミン一家は冬の間はいつも冬眠して過ごすのだが、その冬はムーミンだけが起きてしまったので、春が来るまでは谷の仲間達と過ごすという話だった。ムーミンは最初、冬を寒くて暗くて寂しいからとても嫌う。スキーもうまく滑れないし家族もみんな眠っているからなおさらだ。だけど冬から春に変わる頃には、冬を楽しめるようになる。そしていよいよ春が来てみんなが起きだすと、ムーミンはあんなに嫌だった冬を懐かしそうに思い出している。
 私はついムーミンと自分を重ねてしまう。自然の側で暮らすことは楽しいことだけではない。雪も雨も晴れの日も、やりたいことはやるぞと外に出ても、長靴が雪で全部埋まってしまうと、そうもいかない。冬の晴れた日は好きだけれど、ビュービュー吹きつける風の音は今でも怖いと思う。でも、そんな冬が長くて厳しいものだからこそ、春が訪れるのはなおさら待ち遠しいし、冬の日をふと思い出す時もあるのだと思う。
あと一月もすれば、私が戻ってきた日と同じような残雪の風景になる。変らないこともあるけれど、季節は確かに巡っているのだ。(治)

15年度に行われた大きなイベントを報告します

     
 
第8回歳時記の郷 奥会津 全国俳句大会(平成15年8月30日・31日)
 

 檜枝岐村の東雲館を会場に、全国から焼く約三百名近い参加者を迎えて、特別賞句の表彰、講評を行い、選者の先生方の俳句談義に耳をかたむけました。夕刻からは鎮守神社の舞台で、千葉の家花駒座による寿式三番叟と藤の和芸能保存会による大神楽を見学。翌日の嘱目吟では、檜枝岐歌舞伎の息吹を実感した句も多く作られました。
 二日目は、当日句の表彰・講評のあと、ドイツ文学者の池内 紀先生が「自然」の言葉と題して基調講演。ドイツにも季語に似た言葉があるという興味深い話に、俳句と異文化とのつながりを新たに発見しました。
 
〜特別賞句は次の通りです〜
 

【歳時記の郷・奥会津俳句大賞】福島県 二瓶 清七
 どの家も母の声して盆の宵

【歳時記の郷・奥会津俳句大賞準賞】千葉県 斎藤 節子
 枉げ輪つぱ厨に乾き猟期終ふ

【只見川電源流域振興協議会賞】福島県 近野 咲子
 空弁当野焼きの匂ひしてゐたり

【柳津町長賞】群馬県 桜井 映夫(芝根南)
 麦畑つんつん母が沈みゆく

【三島町長賞】
神奈川県 高松 久代
 弁慶の見得羽子板をはみ出しぬ

【金山町長賞】千葉県 小林いさを
 ひたすらに春追い越して雲辺寺

【昭和村長賞】群馬県 笠原 十一(悠保)
 十薬を干して余生の夢捨てず

【只見町長賞】広島県 小山 知里
 大きな手見せ合ふ田掻日和かな

【南郷村長賞】埼玉県 川辺 了
 故郷は寝れば蕩児に団扇風

【伊南村長賞】栃木県 井上 昌子(薫子)
 一つ家のひと間を灯すそばの花

【舘岩村長賞】栃木県 渡辺 キン子
 白むくげ弟がいた疎開の日

【桧枝岐村長賞】岐阜県 小林紀代子
 水分の神に一礼蕨採

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大賞受賞者二瓶清七さんの声
   
   
  八十七歳で身体不如意のため参加できずに失礼いたしました。他界した妻への鎮魂の意味も込めて詠んだものです。はからずも大賞をいただき、ありがとうございました。皆様のご健闘を祈り上げます。
 
第8回歳時記の郷・奥会津フォトコンテスト(平成16年1月31日)
 
 この日、南郷村さゆり会館において、奥会津フォトコンテストの表彰式が行われました。今回は、個人部門・グループ部門合わせて、1086点の応募がありました。その中で、入選された方々は次の通りです。本当におめでとうございます。
 
 
〜個人部門〜
   
【グランプリ】   こじまじゅん『秋の日』
【準グランプリ】 高田隆子 『里の秋』
           中西美那子『秋の渓谷』
【審査委員長竹内敏信賞】
           上川順子『水映変化』
【上原治雄賞】 本田安正『初秋の実り』
【榊原透雄賞】 清水政一『仲良し』
【堀江克彦賞】 酒井なみ『雪ざらし』
【柳津町長賞】 長澤和正『雪面模様』
【三島町長賞】 五十嵐一二『春光』
【金山町長賞】 佐藤美智子『雪の里』
【昭和村長賞】 小島道男『潤いの朝』
【只見町長賞】 淀川潤『夏の峠路』
【南郷村長賞】 蓮尾栄一『南郷の朝』
【伊南村長賞】 保坂美枝『秋の明暗』
【舘岩村長賞】 高橋孝子『山里の春』
【檜枝岐村長賞】 青木勝美『瀑布』
【富士フィルム賞】 菅家亮『虹のかかる里』
【フレームマン賞】 木村務『よさこい踊』
【入選】久保鐡男『終演』、黒米昭秀『葉炎の谷』、佐川栄治『近づく足音』、佐々木節子『スパンコール』、鈴木國雄『朝霧湧く』、高田健三『紅蓮の秋』、西方功治『早春』、星武男『奥会津日の丸模様』、星廣人『渓流』、松山伝『陽の当る晩秋の玉川』、安井博道『明ける』
 
 
個人部門グランプリ作品
大賞受賞者こじまじゅんさんの声
カラーの風景写真が多い中で、モノクロ・ポートレートで入賞できたのがうれしかったです。
 
〜グループ部門〜
 
グループ部門グランプリ作品

【グランプリ】    PC大沢『奥会津彩々』
【準グランプリ】   オーバルPC『山里の守神』 
            大樹B『里の春』
【学研CAPA賞】  FCおんべ『四季の彩り』
【写真弘社賞】   フォトサークル四季『舟鼻峠の四季』
【フォトテクノ賞】  PCイオ『豊かな自然』

 
PC大沢 代表 五十嵐一二さんの声
3人で受賞というのがなによりうれしいです。
 
 表彰式では、九町村長賞の副賞品が発表されると、時折どっと笑いが起きるなど、和やかな雰囲気の中で行われました。表彰式の後は、竹内敏信先生の講演会「日本人の原風景―天地―」が行われました。実際に撮影したネガを用いて、『日本の原風景』を撮影された時の撮影方法やエピソードで進められ、失われつつある日本の原風景を撮り続ける姿勢が伝わってきました。
 その後は、さゆり会館で、受賞者と雪の撮影ツアーの参加者、町村長や審査委員を交えての交流会を行いました。ステージでは、本名祐雄南郷村長や審査委員の先生からあいさつがあり全国各地からの参加者と交流が深まりました。
 今後入選作品は、各町村での展示を行う予定です。お出かけの際には、是非ご覧下さい。

奥会津の歳時記6 春の妖精たち

 日当たりのいい土手から雪が消えていく。
 この時期は土の匂いが懐かしくてうれしい。
 残雪を従えた土手に真っ先に咲く花の中でも、キクザキイチゲの可憐な白さは、まさに春の妖精。陽光を求めて両手を広げ、花びらを一杯に開かせる昼間の姿。花びらを丸く閉じて、うつむいている朝・夕の姿。霰こぼしのようにひっそりと土手を彩る春の妖精たちは、雪解けと同時にやってくる。

撮影・山浦芳明 (三島町)

 
SPOT1 曲家集落(舘岩村)
    雪深い奥会津で、馬と人間が共に住む暮らしの工夫が見える曲屋。
 藁葺きの独特の屋根が連なる一角は、周囲を畑に囲まれて、農村ののどかな空気が漂っている。集落にはミンジャ(水洗い場)と水路が巡らされていて、かすかな水の音が聞こえてくる。雪から開放された曲屋集落は、これからの春の百緑の中で一層ひなびた風景を作り出す。
 ミンジャで山菜を洗う姿には、かつての農村の原風景を見る思いがする。
 
SPOT1 水芭蕉としらかばの杜(昭和村)
 
   博士山の麓にある自然の杜は、国道401号線に面していて、車の中からもその見事な景観に触れることができる。芽吹く前のしらかばの根元を覆う数万株の水芭蕉が、残雪の中から次々に白い姿を見せるのは4月下旬頃から5月下旬頃まで。
 しらかばの柔らかな緑は、6月初旬、初夏の陽光にきらめきを増す。
 杜の散策を促す自然のままの遊歩道を分け入ると、そこはすでに別世界。鳥の声や小川の水音を聞きながら、時を忘れてしまいそうだ。
 東屋でお弁当を広げている姿が車窓から見えると、つい車を止めたくなるような美しい場所である。
     
 
奥会津の郷土料理

●トチっけぇ
 添加物を一切排した雑穀だけの、まさに原初の味。トチ餅を作る過程で、辛味や苦味の状態をみるという意味もある。
 奥会津のいのちを支えたかつての代用食は、今、その素朴で深い味わいで人々を魅了する。まさに縄文の味。
 トチの身は苦味や辛味が強く、そのままでは食用にはならないため、一週間ほど冷たい流水に晒し、木灰(ナラやリンゴなど)でアクを抜く(アク垂れ)必要がある。実が実際に口に入るようになるまでには、気が遠くなるような手間をかけなければならない。
 トチっけぇやトチ餅は、温かくなると苦味が出てくるため、春先までの食材である。

■作り方■

アクを抜いたトチの実をとろ火にかけて、プツプツする位の温度になったら湯を捨て、新しい水に代える。これを5,6回繰り返して、最後は強火でやわらかくなるまで煮て、皮をすくい取る。そこにモチキビを加えて、モチキビがとろとろになるまで煮る。


●つと豆腐
 祝い膳を賑わす一品で、ワラの筒こに詰めて蒸した豆腐は、余分な水分が抜けて日持ちもする。さまざまな具が彩りよく、舌触りもなめらかだ。
 それぞれの村や町で手作りされる豆腐は、風味も味わいもそれぞれにこだわった逸品ぞろいだが、ただでさえおいしい地の豆腐を使って家庭で作られるのがこの料理。
 そのままでも美味だが、輪切りにして切り口に薄く片栗粉をまぶして油で揚げ、おろし醤油で食すのもよい。


■作り方■
豆腐に重しをかけてよく水分を抜き、擂り潰して塩少々を加える。ここにきくらげ、ごま、ニンジン、松の実、ごぼうなどの具を、混ぜ合わせてワラ筒に詰め、蒸し上げる。
(ワラ筒がない場合は、サランラップを広げて巻き、水分を抜くために楊枝などで穴をあけてもできる)

     

 

博物館・美術館

奥会津南郷民俗館(南郷村)

 藁葺きの水車小屋を眺めながら館内に入ると、かつてこの地域で盛んだった麻織り用具や麻織物、伊南川での漁撈具、奥会津の暮らしを物語る燈下用具など、約4,000点が 展示保存されています。敷地内には、裕福な農家であった旧名主の山内家と、曲屋の斎藤家、2軒の民家が 移築されていて、当時の暮らしが偲ばれます。

●開館日等:4月16日〜11月25日  
●入館料 :300円(一般)
●TEL :(0241)73-2829